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「…すなわち、『独立』などというたわごとを掲げる暴徒を一掃することが、我々に課せられた中央からの… 引いては母星からの命令である」
Gはそれを聞きながら、あまり自分がいい気分がしないことに気づいていた。
だが友人の心配も判るので、あからさまには顔には出さない。ただ、その話の間中、少しばかり視線をひざに落としていただけである。
たわごとと言うには、あのモニターに映し出されたレプリカの首領の瞳は、意志に溢れすぎていた。
考えに考え抜いた者の持つ意志の力を、彼は感じたのだ。
もっとも、Gは、これまで特にレプリカに何らかの感情を持ったことはない。
アンジェラス星域の母星においては、そもそもメカニクル自体、大した数はいないのである。
自分のことは自分で、という風潮を持つ自然満載の母星の環境の中では、人間の補助的存在であるメカニクルは不要な存在だった。
だから彼にとってレプリカントは「縁が無い」というのが正直なところだった。
縁がないものに、大して感情を持ちようがない。レプリカが人間と恋愛沙汰を起こした、と聞いたところで、ああそうですかと言うしかないのである。そういうこともあるのか、それなら仕方ないな、と。
だが彼はあのモニターを見た日からずっと思っていた。
恋愛沙汰が起こせるのなら、反乱だって起こせるのかもしれない、と。
無論彼も、鷹の言ったように、「命令」のことは気にはなった。
レプリカントだけでなく、全てのメカニクルに共通した、「人間への服従」を規定した一文である。それは全てのメカニクルにとって、反抗すれば自己崩壊を招くものであることはよく知られたことだった。
だが何からの形でそれを解除することができたなら。
人間の開発したものである。完璧ということはないはずなのだ。
前の話が切れたので、Gははっとして顔を上げた。
副司令はまだそれでも前に居る。ちら、と彼は司令の方へと視線をやった。
そしてその瞬間、彼はさっと血が引く感覚を覚えた。司令の視線は自分に向けられていたのだ。
程無くして、解散の号令がかかった。官舎の、自分の部隊の集合場所へと向かおうとした時、彼は下士官に呼び止められた。
「司令がお呼びです、少佐」
彼の背中にまた、軽い悪寒が走った。
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