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「…近いうちに、ヴィクトール市の生産工場に奇襲がかかるだろう。貴官にはその鎮圧の陣頭に立ってもらうつもりだ」
不意に新司令は彼に告げた。決してそれは大きくも強くもないが、彼に有無を言わせぬものがあった。
「レプリカントの」
「そうだ」
ふっと、あのモニターの姿が彼の脳裏に浮かんだ。
「不満か?」
「…いえ、命令ならば」
「ならいい。下がれ」
彼は一礼して司令の部屋を下がった。その間にも、司令はずっと、あの表情が判らない視線で、じっと自分を見据えていた。
どういうつもりなんだろう、と彼は思う。前任の司令のように、自分に多少なりとも好意を持っているのなら、それはそれで判る。
だが、あの視線は。
何となく全身を、そして心の中まで見通されているような気がした。
もしかしたら、本当に見透かされているのかもしれない。偉大なる第一世代には、そういう能力を持つ者も居るのだ。
だけど何故。
彼は不安になる自分に気づく。
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