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「レプリカントには、他のメカニクル同様、人間には反抗できないように初期設定で『命令』が組み込まれている筈だ。だから何かの拍子でそれが壊れた奴が他の奴を解除しようとしても、なかなか厄介なはずなんだが…」
「そうだよな」
Gも軽く首をかしげる。そんな話、聞いたこともない。
だが目の前では、確かにレプリカントと自称する者が、繰り返される録画映像の中、「独立宣言」を、人間への抵抗を公言しているのだ。
「厄介なことになりそうだな」
鷹は腕を組んでつぶやく。全くだ、とGもうなづいた。
「ああ、そろそろ行かなくちゃ」
「何処へ? ああ、司令の所か。君は結構気にいられていたもんな」
「そういう言い方は、嫌いだよ」
「嫌いも何も。それじゃあどう言って欲しい?」
腕を組んで、年上の友人は明るく笑う。こんな笑い方をするのに、性格は決して良くはないのだ。Gは軽く眉を寄せる。悪かった、と鷹は左肩をぽんぽんと叩く。
「それにしても最近用を頼まれることが多いな。書類整理か?」
まあね、とGはうなづく。
「このマレエフ第63番軍管区シーシキンもさ、今度、司令が変わるんだって」
「司令が、か。たしかまだ公式発表はされていないよな。俺は知らなかったけど」
「公式発表は、新しい司令が到着してかららしいよ」
「いいのかG? 俺に言っても」
「まあね。別に司令も俺に口止めした訳じゃないし。俺は司令に気にいられてるからね」
「怒るなよ」
「怒っちゃいないよ」
そう言いつつも、Gは書類を抱えて歩きだした。
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