第2話 むかしむかしの綺麗な綺麗な出会い

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* 「…何処の局もやってないな」  ベッドサイドに置いていたラジオのアンテナを伸ばすと、彼は手探りでダイヤルを回した。銀色の細いアンテナは、空に浮かぶ二つの月の光を反射してきらりと輝く。  旧式のラジオは、空間の電波状態をいちいち自動的に整理することはない。  特に時刻の違う地域や、大気圏外からの電波も飛んでくる時間帯にはそれが甚だしい。  雨の音や、わななく鳥の声のようなノイズが、時々耳を刺すように、明るくはない部屋に飛び込んでくる。  軍の備品なら当然だろう。民間用に「綺麗に」整理されたラジオでは、敵軍の電波を拾うこともできないのだから。  そんな中から、彼は幾つかの民間放送を拾いだし、その内容に耳を傾けた。  経済情報や、音楽番組や、詩を朗読している局、それに何処かの地下組織の革命放送の演説まであった。 「そりゃあそうだろう? そんなこといきなり民間に知れたら、何が起こるか判らない。このマレエフだけでもどれだけのレプリカが居ると思う?」 「特にここはスターライト財団の最大級の工場があるからね…」 「判ってるじゃないの」  いつの間にか彼の個室に入ってきていた友人は、当たり前のように声をかけた。  そして座る彼の前に立つと、くい、とその顎を上げさせる。慣れた友人の仕草に、Gは表情を変えることもなくあっさりと言葉を返す。 「常識でしょ。しかもマレエフの工場には、HLMの最大級の原料タンクがあるんだからさ」 「最大級。もしくは唯一。ここにしかない、ね。全く、いつの間にここに運び込んだのやら」  そう言いながら友人の手は、顎から首へと回り、Gの長い黒い髪をまとめていたリボンをするり、と解く。  それが合図の様に、彼は目を半分閉じる。  髪をかきやりながら、鷹は彼の右の耳に何やら囁いた。  途端に彼の身体から力が抜ける。軽く押されただけで、Gは自分の身体が落下していく感覚を味わう。  こんな関係は、もう結構長いものだった。士官学校の頃からであるから、もうどの位になるだろう。  出会った時には、ただの先輩と後輩だった。それが幾つかの季節を過ぎた時、友人になった。
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