29人が本棚に入れています
本棚に追加
中国人だけでなく様々な国の人間が行き交う天井の高い大きな建物は国際空港だ。
天井から吊るされたモニター画面には飛行機の時刻表が表示されており、その中の一つに日本・東京の文字があった。
「雪十」
名前を呼ばれて振り返った雪十が相手に向かって笑顔を見せる。彼の一歩後ろには憧燿がこちらは見ずに佇んでいた。
「はい」
二人分のパスポートとチケットを差し出したのは陽だった。
「相変わらず雪十は何も持ってないよね」
陽のツッコミを雪十は笑って交わした。
自家用ジェットにて中国へと連れて来られた雪十と憧燿には日本に帰る術がなかった。
「刃闇は一緒じゃないのか?」
「仕事でね」
思わず憧燿を見た雪十に憧燿は真顔で答えた。
「まだ誰も殺していない」
「大丈夫大丈夫。憧燿は関係ないことだから」
思わずフォローしてしまう陽とその言葉に安堵する雪十。二人の反応を理解していない憧燿。
奇妙でちぐはぐな三人のイケメンに周囲から女性たちの好奇な視線が集まっていたもののそれすらも気付かないままの三人。
「とりあえず行こう。詳しい事情は飛行機の中で聞かせて」
「あぁ。そうだな。聞いてくれ。俺の愚痴を」
雪十の訴えに陽は笑い、憧燿はただ黙って付いて行った。
終
2024/9/13 Rudy
最初のコメントを投稿しよう!