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ウェン・チャオから逃げるようにして帰国した雪十と憧燿は住む場所を失くしていた。 雪十から相談を受けた陽が用意したのは2LDKのマンションだ。 勢いよくカーテンを開くとコンビニや飲食店の看板が建ち並び、ここからは見えないが食料品の買い物にちょうど良い古びた商店街とスーパーも近くに在る。 駅へのアクセスも良く、現役を引退した老夫婦にとっては通院や買い物などに便利で、現役で働く夫婦+子一人などが短期的に暮らすための場所として申し分ない条件の物件だった。 とは言え、そのどちらでも無い雪十と憧燿の組み合わせが暮らす場所としては少し場違い感があって雪十は申し訳なさそうに陽に告げた。 「悪くないけどちょっと俺たちには合わなくないか?もっと人目が避けられるようなさ…」 「裏社会に追われてる雪十が場末の繁華街に建ってるマンションで暮らしてたら毎日狙ってくれって言ってるようなものだろ?」 にっこりと笑みを崩さずに返す陽に雪十は確かに、と納得させられてしまった。 「ここは明るいしうるさすぎる」 抜群の日当たりと窓を閉めても微かに聞こえる電車の音が憧燿には耳障りだった。 「空間は術で切り離せるし明るい方が雪十の色んな姿がよく見えるよ」 ふぅむ、と顎を掴んで頷く憧燿に雪十は「何考えてんだよ!」とツッコミを入れる。 「昼夜問わず人の動きがあるこのマンションは逆に君たちみたいな人間が紛れるのにはちょうど良いんだ。賃貸物件は住人の移動も多いから余計な詮索をしてくる人間も少ないしね」 ほぉ、と感心しかない陽の話に雪十と憧燿はこの部屋を受け入れた。 「じゃぁ、住む場所が決まったら次は仕事だね。一応の面接はあるけど形式的なものだから」 「はっ?俺は良いとしてもこっちが面接なんて無理だろ!」 親指で憧燿を指さす雪十に陽も深く頷いて同意した。 「採用試験を受けるのは雪十だけ。憧燿は…雪十にくっついて行きたいなら傀儡のマネでもしてて」 「kairai?」 疑問符しか浮かんでいない雪十だったが憧燿は理解したようだ。 陽に連れられて二人は雪十の新しい職場へと向かったのだった。
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