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奇妙な場所で合流した元夫婦、特に会話するでもなくエレベーターに乗り込み、目的地の階のボタンを押す
「あーっと…皆元気?」
沈黙に耐えかねたのか、元嫁が言葉を漏らす
何のかんの言っても子ども達の唯一無二の母親だし、僕の両親にとっても唯一無二の義娘だ
はい、二人には振られましたが
僕の回答にクスクスと笑ってくれていると、目的の階に着いた
お彼岸には早いとは言え、僕等と同じ発想のご家族が多いのか、小さいお子さんを連れた家族連れと何度も狭い通路ですれ違う
「今日は多いわね」
彼女が呟く
え?そんな何度も来てくれてるんですか?
「当たり前でしょ?あたし苗字変えてないんだから。此処に来る義務はあるわよ?あ、妹さん達に会わないようには気を遣ってるから」
…律儀な元嫁には頭が上がりません…
二人で僕のご先祖のお住まいの小さな廟を開き、持ち込んだ蝋燭とお線香に火を点ける
別に申し合わせたわけではないが、二人で同時に手を合わせしばし黙祷を捧げる
その後慌ててお線香と蝋燭の処理をする
蝋燭を吹き消し、僕がお線香の先端を指で握ると火種が消えて、周囲に香りだけが残った
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