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「抹茶パフェひとつと白玉あんみつひとつね」
量が減ったパスタとサラダを、それでも二人がかりでどうにか片付け、僕等は甘味処へ入っていた
若い頃…結婚当時は簡単に片付けられていたであろうイタリアンに苦戦するとは…僕等もそれなりに年を取ったと言う事だろう
しかし…メニューも開かずにお互いの好物を注文するとは…元嫁侮りがたし、だ
その事を指摘すると
「何年一緒に居たと思ってる?元旦那の食の好みくらい覚えてるっつーの」
そう豪快に笑われてしまった
「そういえばさ」
抹茶のアイスクリームにスプーンを突っ込みながら、白玉を掬った僕に思い出したように
「財産分与してくれてありがと…しかもあんなにたくさん…大丈夫だったの?」
スーツケースに忍ばせていた帯封三つの事か…
まぁ僕もそれなりに稼いでいたって事ですよ?
寒天とあんこを同時に口に運びながら答えると、彼女は更に深い笑みを浮かべ
「あたしの口座に毎月そこそこの金額が外国から振り込まれてるけどね?調べたらスイスからだったけど?」
遠慮なく向かい側から僕のあんみつに手を伸ばしながら
さあ?僕は存じませんよ?何処かのお金持ちに見初められたんじゃないですか?
これは…嘘だ
さっき彼女が言っていた、田舎は噂が広がるのが早いのがわかっていたので、月々のパート代くらいだが毎月振り込むことにしている
やっぱり過去に生計を同じくした相手にいらぬ苦労は掛けたくないものだ
「ふーん?じゃあそう言う事にしてあげる」
彼女の抹茶パフェはとっくに空っぽで、僕のあんみつを減らすことを手伝ってくれているようだ
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