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意識の遠くで大翔の声が聞こえる。
微睡みの中で、急に「兄ちゃん!?」と呼ばれて、俺は体がビクンと反応した。
目覚めると、大翔が目を見開いてこちらを見ていた。
「おぉ、大翔。おかえり」
俺がそう言い終わらないうちに、大翔の感情が爆発して「兄ちゃんだぁぁぁー!」と泣き出した。それから「ごめん……」と謝った。
俺の想像よりはるか上の方で、大翔は色々悩んでいたのかもしれない。
大翔の泣き顔と、態度を見ていると、なんだかそんな風に思えた。
俺は、"お前に救われている" "お前の存在が、俺に力をくれている"と、素直に感謝の気持ちを伝えた。
大翔、謝る必要なんかないんだよ……。
「にぃちゃ……おがえりぃ……」
大翔は、ゆっくり俺に近づいて、ソファーの隣に腰を下ろした。そして、恐る恐る体を寄せてきた。
そんな大翔の頭を、俺はぐしゃぐしゃと撫でまわす。
「心配かけたよな……こわかったよな。ごめんな……」
大翔は「うぅぅ……」と泣きながら、俺の肩に額をのせた。
大翔の"おかえり"が、俺のくたびれた細胞を刺激した。じんわりと、心が温まる。
今、俺は間違いなくここに存在している。
この先の不安なんか後回しだ。
俺は、ただ、今を精一杯生き抜く――。
「大翔、ただいま」
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