ただいま

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 兄ちゃんは先月、隣の市の大きな総合病院で手術をした。  まだ二十歳と若いのに、手術をしなければ助からない病気だった。でも、助かるための手術の成功率はすごく低い病気。  結果的に手術は成功したのだけれど、ガッペイショウというやつになっちゃって、一時は危ない状態だった。でも、早くに対処してもらえたおかげで、その後は順調に回復したと話には聞いていた。  予定していた退院日はどんどんずれて、期待しては裏切られる日が何回か続いた。  手術の後、僕はママと一緒に一度だけ病院にお見舞いに行った。けれど、兄ちゃんは痛みと薬の副作用がつらそうで、チラリと顔を見ることしかできなかった。  げっそりとして、目の下にはクマもできていて、つらそうで、僕は兄ちゃんを真っすぐに見ることが出来なかった。  励ましたかったのに、何も言えなかった。  苦痛に耐えてる人に、なんて言ってあげたらいいのかわからなかった。  それに、それだけじゃない……。  僕は最低なんだ。  僕は……僕も、兄ちゃんみたいになったら、病気になったらどうしようって、こわくなった。  痛い思いも苦しい思いもしたくない。病気になんてなりたくない。死にたくない。死んだらどこにいくんだろう――。  次々に押し寄せる不安に押しつぶされそうになって、兄ちゃんのお見舞いに行った日、僕はこわくて眠れなくなった。  つらいのは僕じゃなくて、兄ちゃんなのに。  僕がつらい時、寂しい時、心細い時、いつも寄り添ってくれたのは兄ちゃんなのに、その兄ちゃんがつらくて苦しくて、心細い時なのに……。
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