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ガチャっと、玄関のドアが開く音がした。
それからすぐに「ただいまぁ~」と、ママの声。
「……って、やだ大翔ってばもう帰ってきちゃってる」
ママはそう言いながら、ガサガサとビニール袋を両手にぶら下げて、リビングに入ってきた。
『おかえりなさい』と、兄ちゃんと僕の声が揃った。
「大翔が帰る前にササっとって思ったのに、今日は特売日だったもんだから、店のレジがすごく混んでて……。ちぇー、サプライズの瞬間見逃しちゃったなー……」
ママはつまらなさそうに口を尖らせた。そして、すぐにフフフと笑った。
「二人とも泣いたの? 鼻が赤くて可愛い!」
ママにそう言われて、僕と兄ちゃんは顔を見合わせた。
そして「本当だ!」と、吹き出して、三人で笑った。笑って……結局、また笑いながら泣いた。
僕たちは、ただ、今、兄ちゃんがここにいるという幸せな時間を、かみしめた。
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