『異世界へようこそ』

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別に、やましいことがなければ、私が持っていてもいいわよね。 私が集めているのは、彼氏のスマホの中にあるデータ。 浮気の気配があるから、彼氏が寝た後に、いつもスマホをパソコンに繋いでデータをコピーしていた。 「ん? これは?」 彼氏が、最近、スマホを新しくした。 だから、古いスマホは、私がもらった。 そして、そのスマホに、見慣れないアプリが入っていた。 「『異世界』?」 彼氏のスマホに、見慣れないアイコンがあった。 気になって押してみると…… 『ようこそ!異世界へ!』 そんな文字が表示された。 「何これ? 変なの」 私は思わず笑ってしまった。 でも…… 「異世界って……本当にあった」 一瞬にしてアプリの中へ吸い込まれた。 「ようこそ、あなたね。彼のスマホを盗み見している人って」 「盗み見…?聞きたくない言葉ね」 指をさして私に向って、若い女性はあざ笑うかのように言う。 「彼は浮気なんかしてないよ?っていうか、ここに来てるってことは恋愛ゲームの世界だもん。課金もしてるし、浮気って言えないよね」 ここは恋愛ゲームの世界なの? よく見ると、リアルでは絶対会えないような、可愛い少年のような男性、和風美人な女性まで、生きてる人間が理想とする異性ばかりが歩いている。 その隣にリアルな人間がいる…。 そして、普通にデートをしているのだ。
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