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ミューン
アイツがいなくなって、世界から色が消えた。
彼は今まで切磋琢磨しながら冒険者としての腕を磨いてきた相棒であり、ライバルでもある存在だった。
隣にいることが当たり前で、笑いながら旅を続けていければそれでよかった。
彼は闇夜に輝く月のように……冷静沈着で、道に迷う俺をいつだって導いてくれた。
『なあ、シルヴァ。俺は君の役に立っているか? 自信はあるが、お前から言って欲しい』
『何を今更。お前は俺にとって最高の相棒だ。ミューン』
『そうか。それならいい。俺もまだまだ君に負けるつもりはないからな』
『ああ。俺もお前には決して負けない。だから、ドラゴンを倒すのはこの俺だ』
俺たちが交わした最後の会話は、レッドドラゴン討伐の時だった。
他にも討伐隊がいたが、ドラゴンは予想以上の強さを発揮して味方全てをなぎ倒し……最後に残ったのは俺だけになってしまった。
あの時、俺の剣が折れたりしなければ。
ミューンを死なせることはなかったのに――
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