灰色のマグノリア

希望はいつも光の中に

　シリアの古代都市　ドゥラ・エウロポス（エウロポスの砦）

　暗く腐敗臭と死臭漂う。カタコンベ（共同墓地）で集会に使う広間には、そこには一人の聖女以外、誰もいなかった。

　盲人でもあったが、普段から音楽が得意だった女は、今年から音楽で功績を認められチェシリスという聖の名を与えられていた。

　聖女の周囲には、心もとない松明の明かりが仄かに照っているだけだった。いつもは、他のキリスト教徒と祭壇へ祈りに行っていた。　

　だが、今日はたった一人で迷い込んでしまっていた。事の経緯は、夜中に寝室では眠りづらいので、仕方なく明かりを持って台所まで歩いていると、いつの間にか、カタコンベにいたという奇妙な出来事が彼女を襲ったのだった。

　盲目だが、チェシリスにとっては明かりは何よりも大切だった。
　ほかの人が自分に気が付いてくれるからでもあったし、瞼でそこが暗いのか明るいのかがわかる。