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2.16 お互い様
ある男が兵役を終え、三年ぶりに帰って来た。
妻が恋しくて、家に帰るのもまだるっこしく、妻に途中まで出て来いと連絡して、その晩は町のホテルに泊まった。二人は久しぶりに夫婦の生活を楽しんだ。
疲れて眠りに落ちてしばらくした夜中、急に廊下が騒がしくなり、部屋の前でどたどたと足音が響いた。一度通り過ぎた足音が戻ってくると、部屋のドアをどんどんと叩く。おそらく友人が泊まっている部屋とでも勘違いした酔っぱらいだったのだろう。
男は慌てて、「おい、旦那が帰って来たんじゃないのか」と横で寝ている妻を揺り起こす。
眠い目をこすりながら妻がうるさそうに答える。
「あら、なに心配してるの。うちの人は兵隊にでてて、まだ帰ってこないわよ」
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