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序章
私はそこそこ幸せな人生を送っていたと思う。小中高とそれなりに仲の良い友達もいて両親にも兄妹と各差をつけられることも無く深い愛に包まれて何不自由なく育てられてきた。そして大学に入って楽しく過ごしていたし、就職も決まって両親に旅行をプレゼント出来るまでに成長して、このまま順風満帆な人生を進むのだろうと信じて疑わなかった。
彼と、出会うまでは──。
◇◆◇◆◇
大槻祥吾さん、会社に入って初めてちゃんと話をした男性で私の教育係として常に傍に居てくれる人だった。ミスを繰り返す私に怒る事もなくいつもカバーしてくれて仕事も手伝ってくれて、本当に頼りになる先輩で甘えてばかりいた。
私が入社して二十日目、会社で新入社員の歓迎会が行われると言う事で仕事終わりに居酒屋で飲む事になった。それまでお酒なんて飲んだ経験はなく、この集まりで初めてお酒を飲んだ。少し飲むとふわふわとしたいい気分になって……。
「おい、大丈夫か、深月。酒飲んだ事ないんだろ、もう辞めておけ」
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