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レンブラントのS夫人像
明智小五郎と綿貫創人が隠し部屋に足を踏み入れた瞬間、重厚な扉が背後で静かに閉まった。彼らの前には、金と宝石が輝く中で、一際目を引く絵画が掛かっていた。**レンブラントのS夫人像**。その荘厳な光の使い方に、二人は一瞬息を呑んだ。
「まさか、ここにレンブラントの絵があるとはな…」と小五郎は呟いた。
綿貫も絵をじっと見つめながら、「これもロマノフ家の財宝の一部だろう。だが、それだけじゃない。この部屋そのものが、何かの隠喩に満ちているようだ」と考え込んでいた。
「この絵が何かの鍵になるのか…?」小五郎が疑問を口にすると、突然、静かな女性の声が響いた。
「お久しぶりね、明智先生」
扉の脇に現れたのは、一人の女性だった。**佳子**と名乗るその女性は、小五郎の旧知の間柄で、かつてレジスタンス活動を共にしていた仲間だった。
「佳子…お前がここにいるとは思わなかったな」小五郎は驚きを隠せなかったが、佳子は微笑んだだけだった。
「私はこの秘密を守るためにここにいるの。連想診断法を使って、この場所に隠された真実を見極める必要があったわ」
綿貫が不審そうに問いかけた。「連想診断法だって?」
佳子は頷き、「そう。この部屋はただの財宝の倉庫じゃない。ここには、人々の心に深く根付いた暗号や記憶を解き明かす仕掛けがある。連想診断法で、真実にたどり着けるかどうかが試されるの」と説明した。
「連想診断法…」小五郎は深く考え込んだ。「まるで、かつての**硫酸殺人事件**のようだな」
その事件は、人々の無意識に潜む記憶を利用し、巧妙な罠を張り巡らせたもので、犯人は最終的に硫酸を使って無惨な手口で殺人を犯した。小五郎はその事件を解決したが、当時の手法が今まさに再び試されようとしていた。
佳子はため息をつき、静かに言葉を続けた。「ここにいる全員が、この連想の罠に囚われているわ。特に、この部屋に隠された**類別トリック集成**が鍵になる」
「類別トリック集成…?」綿貫はさらに深く眉をひそめた。「それは、何かのパズルなのか?」
佳子は頷きながら、壁際の本棚に歩み寄り、古びた一冊の本を引き抜いた。「この本に記されているトリックは、現実の事件に関連しているの。例えば、**両国国技館**で起きた密室事件も、このトリックの一つよ。そして、ここに記された暗号が、部屋のさらに奥へ進むための鍵になる」
綿貫は興味深げにその本を手に取った。「しかし、どうやってこれを解読すればいい?」
佳子は笑みを浮かべて、「それが、私たち全員の連携が必要なところなの」と言った。
明智はタバコを吸いながら、再び部屋を見回した。ロマノフ家のダイヤモンド、レンブラントのS夫人像、連想診断法、そしてレジスタンスの活動。それぞれの要素が一つに結びつき、隠された真実が浮かび上がろうとしていた。
「よし、やるしかないな。これを解き明かして、すべての答えを手に入れるんだ」小五郎は決意を固めた。
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