巻物

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巻物

 小五郎たちは、富田林寺内町での待ち伏せを見事にかわし、その中心部へとたどり着いた。敵の襲撃が続く中、彼らは一つの古びた神社に身を隠した。中は埃に覆われ、長い間誰も足を踏み入れていない様子だった。しかし、神社の奥にある古い巻物が、小五郎の目に留まった。 「これは…?」小五郎は巻物を手に取り、注意深く広げた。  その巻物には、明智光秀の名前が記されており、さらにその血筋が現代に至るまで続いていることが書かれていた。驚くべきことに、最後に記されていた名前は「明智小五郎」だった。 「これは…どういうことだ…?」佳子が驚きの声を上げた。  小五郎はしばらく無言で巻物を見つめていたが、やがて静かに語り始めた。「俺はずっと、自分の家系について詳しく知らなかった。だが、この巻物が示している通り、俺の祖先は明智光秀だ。彼の裏切りと死は、歴史的には悪名高いものとして知られているが…それが俺たちの家系にどんな影響を与えていたのか、今まで分からなかった」 「つまり、小五郎さんは光秀の子孫ってこと?」綿貫が興奮気味に尋ねる。 「そうらしいな。光秀は、謀反者として歴史に名を刻まれたが、実は彼の死後、その血筋は秘密裏に続いていた。そして俺が、その末裔というわけだ」 「でも、それが今の状況にどう関係しているの?」佳子が疑問を投げかけた。  小五郎は巻物を閉じ、ゆっくりと立ち上がった。「この町に来た理由は、ロマノフ家のダイヤモンドを追うためだけではない。明智光秀が築いた何かが、この場所に隠されている。そして、それが全ての謎を解く鍵になるだろう」  その瞬間、神社の扉が勢いよく開かれ、一人の老人が姿を現した。彼は深いシワの刻まれた顔で、小五郎を見つめていた。 「やはりお前が来たか、明智の血を継ぐ者よ…」老人は静かに語り始めた。 「お前は誰だ?」小五郎が警戒を強める。 「私は、この土地を守る者。そして、お前の祖先、明智光秀の秘めた遺産を知る者だ。お前がここに来たのは必然。光秀は、この地に重大な秘密を残している。それを手に入れることができるのは、お前だけだ」  老人は、小五郎を神社のさらに奥深くへと案内した。そこには、巨大な石碑があり、その上には「明智家の遺産」と書かれていた。 「これは…」小五郎が呟く。 「ここに眠るのは、光秀が天下を狙い、そして失った全てだ。その力は、今もなお、この土地に影響を与えている。そしてそれを解き放つのは、お前の使命だ」  小五郎は石碑に手を伸ばし、その表面を触れた瞬間、激しい光が彼を包み込んだ。そして、彼の脳裏に光秀の記憶が一瞬のうちに流れ込んできた。裏切り、陰謀、失敗…そして、最後の望み。 「これは…光秀の…」 「そうだ。お前は光秀の最期の意思を受け継ぐ者だ。この世界の未来を左右する存在だ。だが、お前の前には大きな試練が待ち受けている」  小五郎はその言葉に強く頷き、光秀の遺産を手にし、さらなる戦いに挑む決意を固めた。そして、彼の運命は、新たな方向へと動き出すのだった。
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