50円玉20枚の謎

3/4
前へ
/4ページ
次へ
「最初の展開はこうだった。謎の男が1000円札を50円玉20枚に両替するんだ。ここまでは普通だ」  私は相槌を打つ。確かにそれは最初のシーンだった。小銭に両替すること自体は珍しくない。しかし、物語は次第に不穏な方向へ進んでいく。 「その後、近所で凶器が見つからない殺人事件が起こる。警察が捜査しても、どうしても凶器が発見されないんだ」もう一人が続ける。  私は頷いた。古本市の日の神保町にふさわしい、謎めいた展開だ。しかし、ここからが問題だった。結末を思い出せない。どんな話だっただろうか。両替と殺人事件がどう結びつくのか、すぐには答えが出ない。 「そして最後に、男が再び現れ、今度は50円玉20枚を1000円札に戻してくれと頼むんだ。それで話が終わるんだけど、オチがどうしても思い出せない」  もちろん、50円玉を集めるのが趣味というわけではない。再度、1000円札に戻しているのだから。二人の言葉を聞きながら、私はふと思った。「バラす」という言葉が頭をよぎった。1000円札を「バラす」。それは、もしかして……。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加