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50円玉20枚の謎
私は神保町の大通りをゆっくりと流していた。今日は古本市の日で、町中に古本を求める蒐集家たちが溢れている。古本を大量に購入すれば、彼らはその重さに耐えられず、タクシーを利用するに違いない。普段はタクシーを使わない人たちも、この日ばかりは頼らざるを得ない。そんな期待を胸に、私は流しの運転手として今日も町を回っていた。
すると、歩道から二人組の男が大きく手を振って私を止めた。脇には重たそうな紙袋がいくつも積まれており、間違いなく古本がぎっしり詰まっているに違いない。私は停車し、後部ドアを開けた。
「神保町のカレー店までお願いします」と、一人の男がはっきりと言った。神保町は古本屋の他にも、カレーの街として有名だ。街を歩けば、スパイスの香りがどこからともなく漂ってくる。どの店も個性的な味を提供していることで知られている。彼らが指定したカレー店も、おそらくその一つだろう。古本を大量に買い込んだ後の腹ごしらえに、カレーを選ぶとは、彼らはなかなかの通だと感じた。
二人は車内で古本について語り合っていたが、やがて話題はミステリー小説へと移っていった。ミステリー好きの私としても、彼らの会話は興味深かった。聞き耳を立てるつもりはなかったが、自然と耳に入ってくる。彼らが熱心に話していたのは、古典的なミステリー小説の解答や展開についてだった。
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