球体

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球体

 ある不思議な世界では、時の流れがねじれ、無数のアイテムが異なる次元から漂流してきていた。そんな世界の片隅に、アイテムを集める謎の男、**コレクター**が住んでいた。彼は無数の宝物や神器、そして何の価値も持たない無意味な品々を集めることに生涯を捧げていた。どんなアイテムであれ、彼にとっては特別だった。 **ターボ**と呼ばれる装置を使い、時間や空間を越えて瞬時に移動する能力を持つ彼は、数多の世界を巡り、珍しいアイテムを次々と手に入れていた。その収集品には、強大な力を持つものもあれば、ただの古びた石ころもあった。  ある日、コレクターは不思議な夢を見た。夢の中で、彼は二人の女性に出会った。1人は冷たい風を纏う戦士で、彼女の名は**ボア**。もう1人は、暖かな光を放つ魔法使いで、彼女の名は**美亜(ミア)**だった。彼女たちはそれぞれに異なる目的を持ち、長らく争っていたが、今はひとつの目標で結ばれていた。 「コレクター、私たちの世界が滅びようとしている。あんたの集めたアイテムがその運命を左右するんだ」とボアが冷たく言い放った。 「あなたのアイテムが全てを救うか、破滅へと導くか。それを決めるのは私たちの行動次第。でも、すべてが無意味に終わるかもしれないわ」と美亜は優しくも意味深に微笑んだ。  コレクターは戸惑いながらも、自分が集めた無数のアイテムに目を向けた。これらの中に、本当にそんな力が眠っているのだろうか。彼の疑問は深まるばかりだったが、心のどこかで、この旅が無意味でないことを信じていた。  その時、突然闇の中からもう一人の人物が現れた。彼女の名は**亜子**。亜子はコレクターの古い友人であり、同じく冒険者だった。彼女は長らく姿を消していたが、今、この決定的な瞬間に再び現れた。 「亜子、お前はどこにいた?」コレクターが問いただすと、彼女は穏やかな微笑を浮かべた。 「私は別の世界で新たな力を見つけたわ。これが全てを変える鍵になるかもしれない」亜子は手に握っていた光る球体を見せた。  その球体は、まるで宇宙そのものが凝縮されたような美しさと、不気味さを放っていた。ボアと美亜はそれを見て緊張感を走らせた。 「これが…すべてを終わらせるのか?」ボアが低くつぶやいた。 「あるいは、始めさせるのかもね」美亜がささやいた。  コレクターは亜子の手にある球体をじっと見つめ、胸の奥にある不安と期待が交錯した。そして、再び問いかけた。 「結局のところ、この旅に意味はあるのか?」  誰も答えなかった。ただ、闇の向こうに新たな冒険が待っていることだけが、確かだった。
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