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祖母が生きていた頃はそこまで祖父に対して苦手意識を持っていたわけではない。だが嫌悪感を抱き始めたのは、祖母が病気を患い病院に入院した頃からだった。
両親に連れられ、入院する祖母の見舞いに何度も病院へ足を運んだ。あとから母に聞いた話だが、祖母の病の治療は酷い痛みを伴っていたらしい。だが祖母は子供だった俺が不安にならないよう気遣ったのか、一度も苦しそうな姿を見せたことはなかった。
自分は食事制限があり食べられないのに、見舞いに来る孫のためにと看護師に頼んでお菓子やミカンを売店で買ってきてもらっていたという。記憶にある祖母は、俺が病室の入口から顔をのぞかせるといつも嬉しそうに笑みを浮かべて歓迎してくれた。
しかし状況は芳しくなかった。
あらゆる治療を試したものの回復の兆しは見られず、俺が小学校を卒業するより前に祖母は病室で息を引き取った。
俺と両親は祖母を何度も見舞ったが、そのときに祖父の姿を一度も見かけなかった。疑問に思って母に尋ねたら、祖父は祖母が入院してから一度も病室に顔を出さなかったらしい。入院の手続きや着替えなどの準備は、すべて母がおこなったという。
優しかった祖母を一度も見舞わなかった祖父に俺は初めて嫌悪感を抱いた。
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