世界を救う万の方法

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世界を救う万の方法

「そっち行ったわよ」 「は、はい!」  リーダーの言葉に、私は銃を構えた。巨大な蜥蜴型モンスターが走るたび、ミニスカートがひらひらしてうっとおしい。これも魔法少女としてあるべき正装なので、今更文句を言っても仕方ないことなのだが。  いつもながら、攻撃の瞬間は緊張する。今日は砂漠地帯での戦いなので、砂に足を取られないようにも注意しなければいけない。  私はライフルを構えて、身を低くして敵へと向けた。ピンク色の舌をだらりと出し、全身をぬめぬめとした粘膜で覆われた全長2メートルもある二足歩行のトカゲ。気持ち悪いその頭に向かって標準を合わせる。 ――落ち着け、落ち着け私!  この世界に、モンスターと呼ばれる怪物たちが突如出現するようになって、早二百年。  彼らに対抗できる力として、世界の人々が結託し、太古に失われた魔法を蘇らせたのが百八十年ほど前のこと。その力に適合するのが、魔法少女と呼ばれる女性たちだけであるということがわかり、育成された魔法少女たち――つまり私達が戦場に送り込まれるようになったのがおおよそ百七十年ほど前の事だった。  魔法少女としての素質を見出され、選ばれし英雄として今日も戦う私達。一応立場は公務員ということになっている。十八歳でこのフリフリっぽい服を着るのはちょっと抵抗があるが、まあ贅沢は言っていられない(魔法少女と呼ばれるが、中には三十代、四十代の戦士もいるのだから)。給料は馬鹿高いし危険手当も出るし、人々からは英雄として称えられるしでメリットもりだくさんの仕事だったが――いかんせん殉職率が高いのも事実だ。  今日も今日とて、私達は本部から指令を受け、あちこちに出現するようになったモンスターたちの討伐に向かう。  時に傷つき、時に疲れ、時にそれを隠して笑顔を振りまきながらも。 「ていいいいいいいいいいいいい!」  気合とともに、私は魔法弾をこめたライフルの引き金を引いた。 「“Magic‐Shot!”」  ギリギリまで引き付けての一撃。光魔法を込めた弾丸が、トカゲ型モンスターの眉間を貫いた。 「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」  上がる血飛沫、割れた頭から噴き出す脳漿。モンスターは断末魔を上げてその場に崩れ落ちていく。砂漠の砂の中に、轟音と共に倒れるオオトカゲ。ふう、と私は安堵の息を吐いた。  やっぱり、気持ち悪い見た目のモンスターはどうしてもニガテだ。生理的嫌悪がどうしても先立ってしまう。 「お疲れ様、ユナさん」  てててててて、と真っ先に駆け寄ってきてくれたのは、このチームの心優しきリーダーであるシャルロッテだ。縦ロールの金髪にピンク色のリボンが似合う、二十六歳。マカロン伯爵家の御令嬢に相応しい、美しく気品溢れた女性だった。 「貴女のおかげで、今回も勝つことができたわ。本当にありがとう」 「ど、どど、どういたしまして!」  いつも温かい言葉をかけてくれるリーダーが、私は大好きだった。ただ、彼女に褒められると、どうしてももう一人の存在を気にしてしまうのである。  ちらり、と見つめる先。険しい顔でモンスターの死骸を睨んでいるもう一人の女性がいる。  長い黒髪にポニーテール、鋭い目つきの青眼に長身。シャルロッテとはまったく違うタイプの美しい女性、二十二歳のナツメ。  私は前々から、彼女のことが苦手で仕方なかった。
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