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来た、と私は身構える。ギロリ、とこちらを睨むナツメ。相変らず、美人だが目つきが鋭すぎる。いつも怒った顔をしているように見えるのが恐ろしい。気分は、蛇に睨まれたカエルだ。
「ナメてんのか、貴様」
しかも、彼女はいつにも増してご立腹のようだった。ぐい、と顔を近づけて、女性にしては低い声で威圧してくる。
「オオトカゲを倒せばいいってもんじゃないだろうが。何だ卿の攻撃は?何故もっと早く引き金を引かなかった」
「ぎ、ギリギリまで引き付けた方がダメージ出るし……」
「トカゲ系の中には、死ぬ時に体液が飛び散るパターンがある。ひきつけすぎたら攻撃の時に思いっきり浴びることになるぞ。強酸性の体液を持つ奴だっている。突然変異もありうる。てめえが変な攻撃して体液を飛び散らせたら、お前だけじゃなくてパーティ全員があぶねえんだぞ、わかってんのか」
「そ、それは……でも、あのオオトカゲは……」
「突然変異だったら、教科書に載ってんのと違う色の可能性もあるだろうが。口答えすんな。次はもっと離れたところから撃て、わかったな?」
「は……はい」
怖い。
固まったまま、かくかくと頷くしかない私。そんな私達を見て、シャルロッテが慌てて間に入ってきた。
「な、ナツメ!もういいわ、貴女が言ってることわかったから!……そうね、キコさん。一回お医者さんに見てもらったら楽になれるかもしれないし、私もおすすめするわ。ユナさんは、今日は本当にありがとう。でも、今後は安全も考えて、貴女のことも心配だから……ね?」
「……はい」
いつもそうだ。自分達がナツメにコテンパンにされていると、シャルロッテが助けて優しくフォローしてくれる。
本当に、どうしてだろう、といつも私は思ってしまうのである。
お嬢様のシャルロッテが、唯一呼び捨てする相手がナツメだった。
優しく上品なシャルロッテと、男言葉できつい性格のナツメ。誰がどう見ても正反対なのに、二人は親友だというのである。まったく気があいそうにないのに、一体何故。
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