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ナツメは、チームの誰に対しても厳しい。なんなら、上官相手でもいくらでも物申すという。優秀だがリーダーでもないくせに生意気な女、と陰口を叩かれているらしい。それでも彼女は、言いたいことを言う、のをやめないのだった。
彼女はモンスターに家族を殺され、魔法少女を志望したという。モンスターを憎む気持ち、はやる気持ちはわからないでもない。しかし、それならどうして、一緒に戦う仲間にもっと優しくできないのだろう。
そして、あんなきつくて怖い人を、どうしてシャルロッテは親友と呼んではばからないのか。
「いい加減にしろ、お前!今日の任務はさすがにひどすぎるだろうが!」
「お、ちょ……君!」
その日はなんと、チームメンバーのマコモを上官の前で叱責した。上官も上官でマコモを叱ろうとしていたところであったようだが(今回、彼女が武器の整備ミスをしたせいで戦闘に参加できず、残る仲間でフォローする羽目になったからである)、完全に出鼻をくじかれた形である。最終的には、マコモを怒るつもりだった上官が宥め役になっていたくらいだ。
不思議だったのはこの日、シャルロッテがマコモを庇わなかったこと。いつもならば、ナツメがブチギレていると途中で間に入ってフォローしてくれるというのに。
魔法少女としてもベテランであり、リーダーとしても優秀で、優しいお姉さん的立場であるシャルロッテ。私は彼女のことを、心から尊敬している。それでも時々、彼女も彼女で何を考えているのかわからない。
だからある日のランチ。カフェにて、たまたまシャルロッテと一緒になったその日、尋ねてみたのである。
「……シャルロッテさんは、なんでナツメさんと親友なんです?」
「え?」
「だって、正反対じゃないですか。シャルロッテさんはすごく優しいお嬢様で、ナツメさんは怖くて厳しい人で……全然優しくないし。気も合うように見えないのに、なんで二人が仲良しなのかわからなくて」
私の言葉に、シャルロッテは少し目を丸くした後――ぷっと噴き出したのだった。
「あははははは、それ、よく言われるわ。わたくしとナツメ、本当に全然違うタイプだものね。まるで聖女様とライバルの悪役女王様みたい……なんて言う人もいるそうよ」
「あー、わかります……」
「ふふふふ。……でもね、実のところ……わたくしは聖女なんかではないのよ。本当の聖女は、ナツメの方だわ」
「え」
あのナツメが、聖女?
私の脳裏に、いつも怒った顔でこちらを睨んでいる女傑の姿が浮かんだ。いやいや、と首を振る。まったくイメージが繋がらないのだが。
「やっぱり、みんなわかってないのね」
シャルロッテはひとしきり笑うと、少しだけ寂しそうに目を伏せた。
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