1人が本棚に入れています
本棚に追加
みんなに嫌われて、憎まれて、男達からは醜い陰口もたたかれて、いいことなんて一つもないのに。
「本当は、とても優しい子なのよ。だからわかってる。……魔法少女全体のレベルが上がることで、一体でも多くモンスターを倒せて、助けられる人が増えるってこと」
だからね、とシャルロッテは笑う。
「これからもきっと彼女は怖いことを言うでしょうけど……どうか、彼女を信じてあげて。私にとって世界一大切で、大好きで……愛おしい、最高の親友なんだから」
人は、見た目が全てではない。
愛がなければ見えない真実が、きっと誰もの中に潜んでいる。
私はシャルロッテの言葉を信じて――ある任務の時、ナツメの動きを注視してみたのだった。すると、今まで気づかなかったことに気付くものである。
「シャルロッテ!」
ナツメが自分の武器である槍を抜いて、コンクリートの地面に何かを書き始めた。魔法陣であることはわかったが、それが何であるのかまでは判別がつかない。しかし、シャルロッテは理解できたのか、双銃を抜いてぶよぶよとしたスライム状のモンスターに連続で弾を撃ち込んでいく。
防御力が高く、銃で撃っただけではほとんどダメージを与えられないモンスターだ。しかし顔のまわりを撃たれればムカつくはするらしく、どんどんシャルロッテの方へ移動を始める。
攻撃力の高い弾では、確かにリロードに時間がかかるのは事実。しかし、なんであんなダメージも通らない攻撃をするのだろう、と私は不思議に思った。思ったが、こっちは小さなスライムの欠片をライフルで蹴散らすのに精いっぱいで、本体へのフォローに行けない状態である。
次の瞬間。
「アロワ・クルセリロット・テレメント!」
ナツメの足元で、魔方陣が光った。紫色の魔法陣の中から、巨大な赤い鳥が出現する。召喚魔法、フェニックス。まさか、その時間稼ぎをシャルロッテに頼んだというのか。名前を呼んだだけで、細かい指示もしていないというのに。
フェニックスが召喚されれば、決着はあっという間だった。シャルロッテに気を取られていた巨大スライムが、一瞬にして焼き尽くされていく。まさに、以心伝心、阿吽の呼吸。
『私にとって世界一大切で、大好きで……愛おしい、最高の親友なんだから』
シャルロッテの言葉を、反芻する。
彼女達は正反対だ。だけれど、見ている方向まで違うわけじゃない。
反対だからこそ気付けることがあって、できることもきっとあるのだ。
――私もいつか、貴女たちみたいに……。
勝利を飾った二人がそっと拳をつきあわせるのを見ながら、私は胸を熱くしたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!