世界が破滅しても旦那様💘を愛してる❣️

1/1
前へ
/1ページ
次へ
「し、渋谷課長!!! た、大変です!」 朝食に起きてきた渋谷課長に向かって、リビングにいた波瑠は真っ青な顔で言った。 「せ、世界が破滅するかもしれません!」 「えっ?」 渋谷課長は、パリッと着こなしたいつものブランドもののスーツ姿で、ポカンとしてしまった。 渋谷課長が、ポカンとすることは珍しい。 いつも、隙なく、無駄な行動なく生きているからだ。 しかし、渋谷課長は、妻の波瑠の行動には、正直仰天することが多い。 今日も朝から、いきなり訳のわからないことを言っている。 渋谷課長は、ポカンと開けた口をいつものように引き締めてから訊いた。 「世界が破滅するとは、どういう意味なんだ?」 「だ、だから! 新聞の朝刊に出てるんです! 翔子さん、、椿総理宛の脅迫状が!」 「えっ?!」 これには、再び渋谷課長も驚いた。 総理大臣の椿翔子は、渋谷課長の義理の姉である。 「見せなさい!」 渋谷課長は、波瑠が握りしめていた新聞を取った。 確かに、第一面にデカデカと、『椿総理へ脅迫状! 世界の破滅か? 愛する夫か?』と出ていた。 渋谷課長は、詳しく新聞の文面を読んでみた。 椿総理大臣宛に「核戦争を起こして世界を破滅させないと、最も愛する人間を殺す」という内容の脅迫状が送られてきたと、確かに書いてある。 椿総理の最も愛する人間といえば、夫である兄の圭のことだろう、、。 渋谷課長の四人兄弟の三男の圭は、もと椿総理のSPだったが、今は椿総理と結婚して専業主夫となり椿総理を支えている。 「これ! 圭さんのことですよね?!」 波瑠が、悲鳴のような声で叫んだ。 「ああ。おそらくそうだろう」 渋谷課長は答えた。 「なんてこと、、! でも、あたしっ! あたしっ! この世が滅びても渋谷課長と一緒なら怖くありません! でも、もう、その前に真也と一緒に三人で先に死にましょう。核戦争は、やっぱり怖いです!」 真也は、二人の愛する子供である。 まだ、一歳にもなっていない。 「波瑠、、。まあ、落ち着きなさい」 渋谷課長は冷静に言った。 「まず、世界は破滅したりしない」 「えっ? どうしてですか?!」 「今、警察や総理官邸、それに椿総理自身が必死に脅迫状の犯人探しをしているはずだ。それに、、」 「それにっ?!」 「兄の圭が黙って大人しくしているとは思えない。元SPの敏腕警察官だ。圭兄さんに任せておけば、きっと解決してくれるはずだ」 波瑠は、安堵のため息をついた。 「そうでした! 圭さんは、元警察官でしたよね! きっとなんとかなりますよね?!」 「ああ。そうだ。しかし、、波瑠、この荷物の山は何だ?」 波瑠の足下には、うずたかく食料品が、積み上げられていた。 しかし、みんな、お菓子のビスケットの『ビスコ』であった。 「何なんだ、波瑠。このビスコの山は?」 波瑠は、自信満々に答えた。 「渋谷課長! どんな災害時にも、非常食はビスコでいいそうです。たとえ、核戦争が起こって生き残ったとしても、ビスコがあればきっと大丈夫です! それに、あたしビスコが大好きで、毎日食べても飽きません!」 「波瑠、、」 渋谷課長は言葉を失った。 非常食を揃えるにしても、普通もっと深く考えるものだろう、、。 しかし、渋谷課長は、こんななんだか突拍子もない妻だが、深く愛している。 渋谷課長は、ただ、こう言った。 「世界がたとえが破滅しても、私は君を愛しているよ。波瑠、、」 それを聞いた波瑠は、自信満々の笑顔で、渋谷課長に向かって叫んだのだった。 「渋谷課長!!! あたしも愛してます!!! たとえ世界が滅びようと、渋谷課長のことは、あたしとこのビスコが守って見せます!!!」 『世界が破滅しても旦那様💘を愛してる❣️』 end
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加