プロローグ

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  プロローグ

 同級生がこの世から離れたのは夏休みに入る少し前の出来事だった。  自ら命を絶った出席番号7番・倉本東谷(とうや)くんは言わば、クラスのムードメーカー的なポジションを我がクラスで確保していた。  お調子者で、何も考えていないよ俺は、と自ら自負し、皆からはよく「お前が羨ましいよ。」なんて皮肉めいた冗談を言われていた。その度に何時も、いいだろ〜少しはお前らも俺を見習えよ〜と冗談混じりに、はにかむ笑顔はいつものクラスの光景の一つとして馴染んでいた。  そんな彼は夏間近の6月の頭に、自宅で母親に変わり果てた姿で発見された。  クラスメイト達は皆その事実を、まだ10代の人生の中で体験した事の無いような、衝撃と悲しみと驚き、そして少しの『何で彼奴が?』という疑問とハテナマークを顔に浮かべながら、必死になにかを受け入れようとしていた。  でも、私は知っている  何故、彼はこの世から離脱する事を選んだのか   何故、彼は誰にも『その姿』を見せなかったのか  そして私は  17になる夏に人の心の片鱗を見た気がした
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