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謎のポータル
それは、突然のことだった。
国民の目が見つめる中、街の中央に謎のポータルが現れた。
淡く光る渦が静かに回転し、誰もが不安を抱いた。
覇権主義者である独裁者ヴァローズの治めるこの国は、隣国との紛争が絶えず、常に緊張状態にあった。
最初は敵国が送り込んだ兵器だと考えられたが、数ヶ月経ってもポータルから何も現れず、疑惑は不安へと変わっていった。
「異世界へ繋がるゲートかもしれない」
そう人々が噂し始める頃、独裁者ヴァローズはその考えに魅了された。
もしポータルの向こうにある異世界で新たな力や武器を手に入れることができれば、さらなる覇権を握ることができる。
彼の心に欲望が渦巻き、そして計画が練られた。
ヴァローズは、反体制派のリーダーであり、国民からも支持を集めるターナーを呼び出した。
彼は巧妙にターナーを「国を救う勇者」として持ち上げ、国民の前で謎のポータルの中へ送り込むことを決定した。
仮にターナーが異世界を発見できれば、こちらの息のかかった強者を送り込み彼を抹殺し、異世界の利権を我が物にすればいいし、もし彼が戻らなければ反対派の象徴を葬ることができるという二重の策略だった。
「国のために」と持ち上げられ、ターナーは裸同然の装備でポータルへと送り出された。
人々の歓声に包まれながら、彼はポータルに吸い込まれて消えた。
それから数ヶ月、ターナーは戻ってこなかった。
国民の間ではターナーの話題は薄れ、ポータルへの興味も次第に消え去っていった。
しかし、ヴァローズはこの状況を利用し始めた。
反体制の思想を持つ者を「国のため」と称して次々とポータルへ送り込み、彼らを国から消し去ることで権力を強化していった。
結果、数千人がポータルに送られたが、一人も戻ってこなかった。
その事実を国民は受け入れ、次第にポータルは恐怖の象徴となり、誰も反抗しなくなった。ヴァローズは自らの権力基盤を盤石にし、反対派のいなくなった国を好き勝手に操った。
しかし、その頃には国の経済は疲弊し、軍備も縮小され、国家は内側から崩れ始めていた。誰も異を唱えられず、ヴァローズの腐敗は止まることがなかった。
やがてポータルの監視は、定年した老人の警備員一人という状態になっていた。
そして、数年が経過したある日、長らく沈黙していたポータルが突然、虹色に輝いた。
ポータルから現れたのは、かつての反体制派リーダー、ターナーだった。
豪奢な鎧を身にまとい、背には不思議な力を放つ大剣を背負っている。その姿を見た年老いた警備員は驚愕した。
「あんたまさか!ターナーさんか…?歳もとっておらん…いったいどうなっとるんだ…?」
ターナーはゆっくりと街を見渡し、懐かしそうに微笑んだ。
「ああ、ただいま」
そう呟いた彼の表情には、異世界で何があったかを物語るかのような深い自信と、人間離れしたオーラがあった。
「あんた、向こうで一体何を…?」
警備員が恐る恐る問いかけた。
「ああ、レベル99でようやく魔王を倒し、帰って来れたんだよ」
そう言ったあと、ターナーは近くにある廃墟ビルを見つめ、パチンと指を弾く。すると天空に魔法陣が現れ、そこから天を焦がすほどの強大な光線が放たれ、ビルを跡形もなく崩壊させた。
「みんな、出てきていいぞ」
ターナーが叫ぶと、ポータルが輝き、過去に送り込まれた人々が異世界の装備を纏い、次々と中から現れ始めた。
「さて、今度はこの国の魔王を倒すとするか。」
終
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