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足の踏み場のない床を越えて、俺とケイトはベッドに向かい合わせで座った。 「それで、事件の情報ってなんだ?」 「まぁまぁ、そんなに焦らないで。」 ケイトは目を閉じ、深呼吸をした。 俺はケイトが話し始めるのを、辛抱強く待った。 「高城は表向きは、大企業の社長だけど、裏では気に入った若い男を何人も囲ってた。俺もそのうちの一人。」 ケイトの表情が曇った。 彼にとっては辛い日々だったに違いない。 俺はケイトの手を握った。 「無理に話さなくていい。」 「ううん、俺はさとしさんの役に立ちたい。俺、正直いうと、取調室でさとしさんを見た時、この人は俺を見捨てるだろうって思ってた。なのに、あの場でカミングアウトするなんてさ。生まれて初めて、誰かを信じてみようと思った。」 「ありがとう。俺は俺の正義を貫いただけだから。」 「それでも俺にとっての恩人には変わりないよ。」 ケイトは僅かに微笑んだ。 そして、再び、高城について話し始めた。 「本題に戻ると、俺は高城のヒモだった。肉体関係もあった。最初はそれだけだったんだ。でも、ある時から高城は豹変した。あいつは本性を隠してたんだ。初めて殴られた時は、痛みで気を失った。それからは地獄の始まり。」 すると、ケイトはTシャツを脱ぎ、俺に背中を向けた。 「この傷は、高城が付けた。」 それは痛々しい傷跡だった。 「だから、俺は高城から逃げることを決めた。あいつが仕事で不在のうちに、無我夢中で逃げた。だけど、俺には行く宛てがなかった。その時、バーの店長のアキラさんと再会して、匿ってもらうことになった。」 俺はケイトの話を黙って聞いていた。 そして、ふと気がついた。 「俺と会う時はどうしてたんだ?」 「あいつが出張の時を見計らって、マンションを抜け出してた。」 「そうだったのか。何も気づかなくてすまなかった。」 「ううん、さとしさんが謝ることじゃないよ。俺が気づかれないように振舞ってたんだから。」 思い返せば、毎回、ケイトは服を着たままセックスをしていた。 それは俺に傷跡を見せないためだったのだろう。 「だから、高城を恨んでる人間は多いってこと。俺もその一人だけど、俺が殺す前に、誰かに殺されたけどね。」 「ケイトは小柳を恨んでる人の心当たりがあるのか?」 「うん。」 ケイトは頷いた。
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