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俺を見たケイトは一瞬、驚いた表情を浮かべたが、言われるがまま取調室の椅子に座った。
俺は、今朝、ぐっすり眠っていたケイトを起こさないようにホテルを後にした。
それがまさか、こんな所で再会するなんて、誰が予想できただろうか。
「取り調べを担当させて頂く河野聡です。って、自己紹介はもういいですよね。五十嵐圭人(いがらしけいと)さん。」
俺の発言を聞いていた皆が、ざわつき始めた。
だが、俺は気にせずに粛々と取り調べを続けた。
「あなたは、殺害された高城満さんとはどのような関係でしたか?」
「バーで出会って、そこから、なんていうか、ヒモっていうか、だったんですけど、あの人、暴力を振るうようになって、俺は耐えられなくて、3日前にあの人が仕事に行っている隙に、マンションから抜け出しました。」
「その後はどうしていましたか?」
「知り合いを頼って、バーの店長が店の2階に匿ってくれていました。」
「では、最後の質問です。あなたは、昨日の夜10時から深夜0時の間
どこで、何をしていましたか?」
「それは...」
「どうかしましたか?」
俺は口を閉ざす、ケイトを見つめた。
「...お前が言わないなら俺が言う。」
すると、ケイトは意を決したように話し始めた。
「男性と一緒に居ました。午後7時頃からバーで飲んで、午後10時にはホテルに居たと思います。それからは朝まで彼と居ました。」
「それは誰ですか?」
「......さとしさん、あなたです。」
取り調べを別室で聞いていた刑事が、すぐに乗り込んできた。
「河野、事実なのか...?」
「はい。」
「お前ってやつは...」
「俺と朝まで一緒に居た彼にはこの犯行は不可能です。俺から誘ったので、通話履歴を調べてもらえば分かりますし、恐らく、ホテルの防犯カメラにも映っていると思います。」
「自分が何をしたか分かってるのか!被疑者と関係を持つなんて前代未聞。しかも、相手は男だぞ。」
俺はその言葉を聞いて、拳を握った。
「失礼ですが、俺はケイトさんと数ヶ月前から付き合いがありました。なので、被疑者と関係を持ったは聞き捨てなりません。それから、俺が同性愛者だということと、事件とは関係ありませんよね。」
といっても、ここは警察組織。
俺をみる皆の視線が凍りついたように冷ややかだ。
「お前の処分は追って連絡する。それまで、自宅待機だ。」
「分かりました。」
組織を乱す俺は用無しということか。
取調室から追い出された俺を、ケイトが不安そうに眺めていた。
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