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「さとしさんの家に行く前に寄りたい所あるんだけどいい?」
「どこだ?」
「匿ってくれてるバーの店長のとこ。そこに俺の荷物もあるから。」
「分かった。」
俺は、ケイトの後をついて行った。
歌舞伎町は朝と夜では、全く違う姿をしている。
この場所も夜になると、ネオンで彩られ、欲望にまみれた人達で溢れかえるのだろう。
「ここ。」
ケイトはバーの入口の鍵を開け、中に入った。
「すぐ荷物取ってくるから、さとしさんは待ってて。」
「ああ。」
そういうと、ケイトは足早に2階へと向かった。
「ケイト、帰ってきたのか?」
奥から男性の声がした。
そして、彼は俺を見るなり、手元にあったナイフを向けた。
「誰だ、お前。」
ナイフを持つ手が全く震えていない。
この男、場数を踏んでいる。
「俺はケイトさんの付き添いで来ました。河野と申します。まずは、そのナイフを置いてくれませんか?」
俺はあえて、自分が刑事だと名乗ることをやめた。
「さとしさーん、おまたせ...って、アキラさん、何してるの!?」
「何って、ケイトの追っ手かと思って。」
「さとしさんは、俺の恩人。だから、そんな物騒なものは早くしまって。それから、今日から俺、さとしさんの家にお世話になるから。」
ケイトの言葉に納得したのか、アキラはナイフを置いた。
「分かった。ケイトがそう言うなら。」
すると、アキラは俺に頭を下げた。
「数々の無礼をお許しください。ケイトのことよろしくお願い致します。」
「顔を上げてください。誤解が解けてよかった。」
「アキラさん、また来るね。」
「ああ。今度は2人で飲みにおいで。」
「うん。お世話になりました。」
アキラは愛おしそうに、ケイトの髪を撫でた。
俺は2人の様子を無言で眺めていた。
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