家には帰りたくない

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「きららちゃん、おやつにぶどう食べるでしょ? 冷蔵庫に冷やしてあるよ」  モヤモヤの膨らみを止めるべく、自室に行こうとして今日も失敗した。階段に向けた背中へ、祖母は容赦なく愛をぶつけてくる。  宿題とか友達と電話とか、適当な理由は幾つだって浮かんだ。しかし、あしらった先に違う痛みが見えて、体の方向を変えた。 「…………うん。手、洗ってくる」 *  洗面所にて、風呂掃除を終えた母と鉢合う。『おかえり』を聞いた瞬間、感情が低い声となり溢れた。 「本当、きららって誰」  きららという人物については、父も母も知らない。私含めて、どこかで聞いた記憶はあるのに、出所は突き止められなかった。  結局のところ、祖母の友人とこじつけたものの、すっきりはしていない。 「いいじゃない。名前嫌なんでしょ。遊びと思って今だけ合わせてあげてよ」  タオルで手を拭きながら、母が苦笑した。  確かに、私は自分の名前が好きではない。今時“子”なんて古めかしいし、弘なんて組み合わさればその威力は増す。  両親の名前を一文字ずつ組み合わせた結果らしいが、どうしても愛せなかった。  その観点で見れば“きらら”はいいのかもしれないけど……キラキラ過ぎない? 「まぁ害はないんだけどさー。なんで私だけ間違えるかな」
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