家には帰りたくない

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 おやつにぶどう。それも緑のやつ。これも毎日のルーティンだ。  平日だろうと休日だろうと、祖母は用意して待っている。ご丁寧に、枝から粒を外した状態で。高価な時期だろうが、お構いなしに買いたがるそうだ。母が苦笑しつつ言っていた。 「きららちゃん、美味しい?」 「……うん」  実は、ぶどうは好きではない。昔は好んで食べていたらしいが、今はそうじゃないのが本音だ。いや、好きじゃないどころじゃなく、食べすぎて嫌いに傾きはじめている。 「おばあちゃんも食べなよ」 「るるみって呼んでってば」  るるみ――嫌いな響き第二弾に、一瞬口が止まる。きらら同様、るるみも知らない名前だった。  誰のとも分からない名前で、呼んでほしいと何度も祖母は言う。トキからるるみって、何をどうしたらそうなるのやら。 「…………お母さんにもあげていい?」 「いいよ、きららちゃんは優しいねぇ」  温和な笑みに見送られながら、皿ごと持って立ち上がる。  洗濯物を回収していた母親は、お疲れさまと言って丸ごと受け取ってくれた。
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