大好きなのにイヤになる

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「…………ただいま」  赤い目と格闘していたら、すっかり遅くなってしまった。今日もバタバタと、祖母の音が聞こえてくる。 「きららちゃん、今日もかわいいねぇ!」  それから、変わらないルーティンを突きつけてくる。遅かったねとか心配したとか、学校大変だったねとか、それなりの言葉が欲しかった。  なぜか今日は、悲しみを通り越して苛立ってしまう。つい先ほど、己を納得させたばかりなのに。 「弘子ー! 遅かったじゃん、心配したよ!」  遅れて登場した母が、望んでいた言葉を発した。なのに気持ちは浄化されず、夜と同じ色になってしまう。  限界だった。続くことを考えたら、耐え難くなった。 「…………おばあちゃんさ」 「きららちゃん、るるみって……」 「変だよ! あまりにも忘れすぎだよ! 私はきららじゃなくて弘子だよ!」  だから、叫んでしまった。  祖母の顔が驚き、しゅんと沈む。理解できていないのか、返事はなかった。  あ、もっと穏便に伝えればよかった――後悔したのも束の間、祖母に笑顔が戻る。だが、あからさまに引き攣っていた。 「…………ぶどう食べる?」  決着をつけたはずの涙が、再戦を求めてくる。力を増した相手に、勝てる気がせず部屋へ急いだ。
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