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祖母の部屋に入るのは何ヶ月ぶりだろう。大好きだった部屋が廃れていたら嫌だな――恐れに足を引っ張られながらも、隙間を一気に広くする。
ひらけた視界に飛び込んできたのは、散乱した本類だった。
荒れ具合に一瞬おののく。しかし、物体がアルバムやノートだと気づいた時、意識は切り替わった。
祖母は何かを見て、行動を決めたのかもしれない。それはもしかすると、私が変だなんて言ったからかもしれない。
私のせいで祖母に何かあったら――今更、強く当たってしまったことを悔やんだ。
無造作に散らばるアルバムには、多くの写真があった。もちろん、幼い私と若い祖母の写真もある。
枠の中の二人は、全身で幸せを語っていた。温和な笑顔は何も変わらない。今は少し皺が増えただけで。
ああ、これは隣町の公園だったっけな。これは、名前は忘れちゃったけど、保育園の頃仲良しだった友達の家だ。えっと、これはどこ行った時の写真だっけ。
綺麗に並べられた記憶は、すっかり記録になっていた。淡く覚えてはいるものの、ほとんど思い出せない。
多くを忘れてしまうのは、おばあちゃんだけじゃないのに。私は。
手がかりを求め、次のアルバムを引っこ抜く。バランスを失った山が崩れ、一冊のノートが瓦礫の中を滑り出た。
ノートより明らかに古い紙が、チラリとはみ出している。
誘われるよう抜いた。瞬間、衝撃が駆け巡る。
描いてあったのは、下手な人間の落書き二人分。それから“きらら”と“るるみ”の文字だった。形になりきっていない文字からは、幼さが漂っていた。
これは、おそらく私が描いたものだ。
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