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ここには、みんながいるのに、一人だった。
一人というよりも、空気に過ぎなかった。私は、人として扱ってもらえていない。
「ねえ、これ見て」
「ちょーかっこいい。もしかして、新しい彼氏だったりして」
「そう、あたり」
「見せて、見せて」
「いいよ」
「この人って、こないだ話してた彼だったりして」
「そうだよ」
「すっごい」
「いいな。私の彼氏はそんなかっこよくないから、羨ましい」
「ほんと。そうだよね」
「いいでしょ」
最初のうちは、私も混ぜてくれる。お菓子をみんなで食べながら、楽しくおしゃべりしていた。
その時間が続いてほしかった。
それでも、それは長く続いたことはない。
彼氏がいたことがない私は、恋バナが始まると、仲間には入れてもらえない。
前に、見せてもらおうと声をかけた時、怪訝な顔をされた。だから、声をかけることもない。ただ、空気になるしかなかった。
一人になるよりはましだから。
私が用意した紙皿も使わず、それぞれ思いのままに食べていた。
ただ、並べられた皿が、中身がない私のようだった。
中身がないから、なにかないと不安で、集めないといけないと思ってしまう。
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