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ゲームをもう一度はじめるかどうか悩んでいた。
やり直すのが面倒になってきたのだ。こんなに唐突に飽きが来るとは思わなかったが、やめどきなのかもしれない。
飯束さんが帰って何分もしないうちにまた訪問者があった。
明日から学校へ行くと決めた以上、雑にも扱えない。母さんに呼ばれて玄関から顔を出す。
なんとなく知っているような顔だった。名札を見れば6年1組太田ノボルとある。一学年うえの男子だった。
顔を見るなり彼はぐんと一歩近づいた。
「島崎哲太くんだね」
「そうだけど」
「おれは図書委員をやってるんだけど、きみ、学校の本を借りっぱなしだよね?」
「ああ、はい。それはもう――」
解決していることを告げようとしたらさえぎるように言葉をかぶせた。
「貸し出しカードを見たんだ」と飯束さんと同じ説明をはじめる。
「あの、だから……」
「クラスに行ったらずっと休んでるっているから、家まで押しかけちゃったけど。おれが代わりに返しておくよ」
「でも、自分で返しに行きます」
「本当に学校へ来るの?」
太田くんはいぶかしげに哲太を見下ろした。
「ただのサボりなんで。そろそろ学校へ行こうと思ってたところだったから。ちゃんと自分で返さないと」
「ふうん。明日、返してなかったら、また来るからね」
渋々といったかんじで太田くんは帰っていったが、どうしてこうも図書委員は使命感に燃えてしまっているのだろう。しかも横の連携も取らないで何人もやってくるなんて。
またやってこられても面倒だ。
明日こそ学校へ行こう。
久々の学校は今からちょっとドキドキしてくる。
馴染めなかったらどうしよう。こんな気持ちになったのは初めてだった。
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