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「そういうもんなんですよ。でもって、外から来た人ってのはやっぱり違うんです。都会から来た、洗練された空気っていうんですかねえ、そういうもんに憧れる気持ちが田舎者にはあるっていうか。その上で、あたしらが不満に思っていたことをもう容赦なく口にできる。嫌だと思っていたことを嫌だと言える。そういうのをね、若者はかっこいいなんて思ってしまうわけです。しかもそれが、とびきりの美人とくれば、ねえ」
わからない、ことではなかった。
柾もそういうところはある。自分が持っていないものを持っている人間を羨ましく思うと同時に、憧れてしまうようなところが。
自分が皐に対してどこか一目置いていたのも、悠月をかっこいいと思うのも同じ理由だ。彼らは、自分が持っていないものを持っている。それがとてもかっこいいと思う瞬間がある。
表向き村の空気に合わせながらも、本当は彼女に惹かれていた男達が多かった、なんてのも理解できないことではない。
「最終的に、松枝さんはあたし達ではなく、氏田の家の男を選びました。なんでよりにもよって氏田の家?と思わなくもなかったですし……要ってはなんですがかなりの醜男でしたから、ありえないと思う気持ちもありましたけど……どっかで納得もしましてね」
ふう、と息をつく日暮。
「あの人は、この村に来た当初から……何百年も前から続く村の身分制度に文句を言っていましたから。氏田の家の男を選んだのはあの男が松枝さんの自己顕示欲を満たす何かを持っていたと同時に、松枝さんなりの村の仕組みへの反発だったのでしょう。一番身分の低い男を、自分のような美しい女が選んだ、というね」
「よく、わかんないです」
「わからなくていいんですよ、こんな感情なんか。ただ、そういうものだと割り切ってくださいな。……村に来たばっかりの貴方たちにはわからんでしょうがね、貴方たちが思っている以上にこの村は窮屈で……鬱屈としてるんですよ。あたしは確かにあの人に惚れていました。でもそれは、一時夢を見ていたようなもんです。あの人は、あたしらのことなんざ気にしてなかったでしょう」
「だから?」
「あの人の息子さんに、あたしが協力するほどの理由はないってことです。夫婦でもなければ、愛されていたわけでもないんですからねえ。確かに松枝さんのことは好きでしたけど、村の若い女の子をたくさん殺すような行為に何故協力せにゃならんのです?いくらあたしでも、そこまで鬼じゃあないですよ」
まあ、否定されるだろうな、とは思っていた。
実際、彼の言うことが正しいならば、松枝と関係を持っていたのは日暮だけではない。ならば何故自分だけが疑われるんだ、と思うのも当然のこと。実際、柾たちだって物的証拠を持っているわけではないのだから。
それでも、個人的には――今の言葉で、むしろ確信できたこともあるのである。
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