このセカイのきまりごと

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 ダサい捨て台詞だとは思ったが、いずれ自分がそれを実行するかもしれないという予感が、わずかに溜飲を下げてくれた。  山を下っていく間中、この後の行動のシミュレーションを脳内で繰り返す。  あのキーホルダーが死体のポケットにないという事は逆に、自分は安全かもしれない。一度第三者に掘り出されてしまったものが、犯人特定の証拠になる確率は薄い。あいつが何を言おうと、警察は話半分で聞くだろう。  あの子供の何か企んだ眼。  もうすでに死体が埋まっていることを知って、こちらの反応を楽しんででもいるかのようだった。  完全にイカレている。  まずはあの子供を何とかするべきだ。  なるべく早く。  今夜、あのロープの鈴を鳴らそう。  誘われて出てきた時が、あいつの最後だ。  ハンドルを握りながら、直基は妄想の世界に埋没していった。今の苛立ちと焦りを脳内から追い払うには必要な作業だった。  車の窓を全開にし、吹き込む風に顔や髪を晒し、脂汗を吹き飛ばすことも。  後部座席で炎が小さく爆ぜる音や、脱ぎ散らかした服が燻る匂いに気づかなかったのも、そのせいだった。
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