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ポムが何者かに殺されているのを見つけた三日前の朝。
家の前の道についた新しい轍を見つけ、冬馬は犯人が深夜に家の前を通った車の持ち主だと確信した。
夜中にトイレに起きた際、山の上から降りてくる白いミニバンを偶然に見ていたのだ。
あの道の一キロ先は行き止まりで通り抜けできない。車は一度冬馬の家の前を通り、そして山道を途中まで上ったあと、引き返してきたに違いなかった。
道をのぼる途中で犯人は納屋を見つけ、スコップを盗んでいった。
何かの目的のために。
犯人の手掛かりがあるとすれば、あの道の先だ。
学校を休み、僅かな轍が消えないうちに慎重に追跡した。
その結果見つけたものは、道から離れたクヌギ林の土を掘り返した痕跡と、斜面に投げ捨てられたスコップ。
掘られた土からわずかに覗いた真新しいアクリルキーホルダーは、犯人につながる物証ではあったが、まだ足りない。
スコップで穴を掘っていくと、一時間してようやく、全てを把握できる材料が姿を現した。
まだ若い女。
キーホルダーに書かれた「桑野直基」ではなさそうなことに安堵し、また元通り、丁寧に土をかぶせる。
その人間の死に、冬馬は興味などなかった。
だが奔走し見つけたすべては、ポム殺しの犯人を追い詰める重要な材料になる。復讐のために、使えるものはすべて使うつもりだった。
犯人が証拠を落としたことに気づくか否かは賭けだったが、もし鈴を鳴らすものがあれば、それは100%桑野直基に違いないと冬馬は確信していた。
そして、鈴は鳴った。
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