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さあ、これからどうしよう。
桑野直基は自分を殺しに来るだろうか。
だったらそれこそ思う壺だ。
どんな罠を張ろう。
この手でポムの仇を取る。
警察に渡す気など、全くなかった。
ロープをどうすべきか考えていると、母屋の方で祖母の声がした。
すぐに慌てた様子で走ってきた祖父が、祖母から聞いた話を伝える。
「冬馬、この道を下りて行った車が火い吹いて、ちょうど入口んところの杉の木に突っ込んだらしい。白いミニバンらしいが、さっき納屋の前に停まってた車じゃないのかな……」
冬馬は数秒動きを止め、じっと祖父を見つめた。
「その運転手、どうなったの?」
「助からんだろうって。婆ちゃんの知り合いがちょうど騒ぎを見て、電話くれたんだが」
「ふうん」
「誰なんだ? 冬馬、さっき話をしてなかったか?」
「べつに。車から何か落としたから、拾って返してあげただけ」
後部座席には燃えやすそうな布や、スプレー缶が乱雑に転がっていた。
だからその中にそっと、投げ入れた。
他意はなかった。
「拾ったものは本人に返すのがこの世のルールだって言ってたから」
ポムのいない寂しさは、どうにもならないけれど。
頬を撫でる風はさらりと乾いて、少しだけ心地よかった。
あとは、あの男がただの哀れな死者にならぬよう、最後の仕上げをするだけだ。そして死者は家族のもとに返す。
「おじいちゃん。そういえば、スコップを拾った場所の近くに、土を掘り返した跡があるんだ。気になるから、一緒に見てくれないかな」
了
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