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小学六年生の時、僕は綺麗な夕景色を見た。
小学生最後の思い出を作るというクラスの行事で、街でも有名な絶景スポットへ行くことになったのだ。
額に滲む汗をシャツの袖で拭いながら坂を上り、街並みや海を見渡せるその場所は、虹山ヶ丘という名だった。
虹山ヶ丘の麓から見える日本海に夕日が沈む、その瞬間。
眩い光が水面に反射し、瞳に感動を与えてくれた。
僕は気がつくと、涙を流していた。
小学生ながら、景色を見て心が揺れたのだ。
――その瞬間、突然雨が降ってきた。
「おい! 優雨のせいで雨が降ってきたじゃんか!」
え……? 僕のせい?
「そうだよ! 優雨が泣くと、いつも雨が降る!」
「せっかく感動してたのに!」
「優雨のせいで台無しだ!」
みんな、僕の方を睨んでる……それも、雨に打たれながら。
みんなからの突き刺すような鋭い視線で、余計に涙が流れてきた。
天も呼応するように、激しく雨を打ちつける。
その時に、悟った。
僕には、涙を流すと雨が降ってしまうという、不思議な力があるんだ……と。
「えー、でもさ」
僕を囲む輪を切り離すように、一人の女の子が手を挙げた。
そして、僕の目を見て、微笑みながら言う。
「優雨君が降らせる雨、すごく優しいよ……」
……僕はその時、心がぐちゃぐちゃになった。
運命の悪戯を恨み、そして包み込むような笑顔に救われた。
彼女の頬に光る水滴が、沈みかけた日の光を反射させ、僕を照らす。
あの子はきっと、僕の太陽だ。
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