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――目が覚めると、酷い寝汗が全身に纏まりついていた。
まったく……最悪な朝だ。
しかもあの日の出来事が、また夢に出てきた。一体何回目だろうか。
もう三年も前の出来事なのに、こんなに新鮮な映像として夢の中に現れるなんて。
虹山ヶ丘の夕景色……叶うことなら、もう一度見てみたい。
「ま、僕にはそんな権限ないか……」
不貞腐れるように独り言ちて、またベッドに横になる。
枕元に置いてあったスマホを手にして、フリック入力をする。ネットで『寝汗 原因』と検索した。
過度なストレス、自律神経の乱れ、ホルモンバランスの乱れ……さまざまな原因が考えられるらしい。
あっそって感じだった。まぁ、だよねぇって感じだ。
ストレスだのホルモンだの、よく聞くけど理解する気を削ぐ単語を目にして、そっとサイトを閉じた。
再び、検索画面に戻る。
今度は検索履歴にある『雨涙現象』という単語が目に入り、ついにはスマホを掛け布団の上に放り投げた。
「どうして僕だけ、こんな目に……」
僕は雨涙現象に悩まされている。それは超常現象だ。
ハッキリと原因は解明できていない。
僕が涙を流すと、僕の周りに雨が降る。謎の現象。
どんなに晴れていても、僕の涙に天が呼応して、雨を降らすのだ。
そのせいで僕はいじめられて、学校に行かなくなった。
中学校に入学して早々に引きこもりになったから、もう三年もこのままだ。
涙なんて、一生流さない。
あの虹山ヶ丘からの夕景色を見た時以来、僕は涙を流していない。
泣いたら……負けだ。
おそらく、この超常現象に悩まされているのは、地球上で僕だけ。
ネットで検索しても都市伝説とか、架空の物語とかでしか出てこないし、実際の声なんてどこにも載っていない。
僕は、どれだけ不幸な人生を歩まなければならないのか。
「僕、一生この部屋にいるのかな……」
カーテンの隙間から入る日の光を嫌うように、毛布の中に潜る。
中学三年生の冬。もうすぐで中学校も卒業だ。
この先に楽しいことなんてない。誰にもわかり得ない足枷が僕には身に付いているのだ。
乾燥する部屋の中。水を飲みに一階のリビングまで降りるのも億劫。
もうひと眠りしようかと目を閉じた時、僕の部屋がある二階に向かって、母さんが何かを叫んでいるのが聞こえた。
「優雨! お友達が来てるって言ってるでしょ! 聞こえないのー!?」
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