0人が本棚に入れています
本棚に追加
※初回ここまで
「今日どしたん? 元気ないけど」
会社の昼休み、食欲がなくデスクにうつ伏せになっている私に、幼馴染であり同僚の花子が心配そうに話しかけてきた。
「推しが、アイドルを引退しました」
しくしくしくとデスクを涙で濡らしながら答えた。
「そんなことかよ。心配して損した」
花子はジト目になると、チューと大豆飲料をストローで啜った。
「『そんなこと』!? 私にとっては人生の一大事だよ!!!!」
「えー。アイドルなんていくらでもいるじゃん。別の人推せばいいじゃない」
「ムリムリムリ!! だって、七年もずっと追っかけてきて何百万もつぎ込んじゃったんだもん!!!!」
花子はちょっと引いていた。自分でも分かってるよ、自分の異常さなんて。でも、ウララくんがアイドルをやめたせいでできた心の穴は、もうふさがりそうにない。
「はぁああ~~~。もうこれからどうやって生きていけばいいか分からないよ……」
「え? そんなに……!?」
「そうだよ。ウララくんは推し超えて私の人生そのものだったんだから……」
ここで花子はドン引きした。
「あーあ。彼以上の運命の人に出会うことってもうないんだろうな……」
「運命の人って……ふつう彼氏とかに使うんじゃないの? アンタ、婚活とかやってみたら?」
最初のコメントを投稿しよう!