※初回ここまで

1/2
前へ
/6ページ
次へ

※初回ここまで

「今日どしたん? 元気ないけど」  会社の昼休み、食欲がなくデスクにうつ伏せになっている私に、幼馴染であり同僚の花子が心配そうに話しかけてきた。 「推しが、アイドルを引退しました」  しくしくしくとデスクを涙で濡らしながら答えた。 「そんなことかよ。心配して損した」  花子はジト目になると、チューと大豆飲料をストローで啜った。 「『そんなこと』!? 私にとっては人生の一大事だよ!!!!」 「えー。アイドルなんていくらでもいるじゃん。別の人推せばいいじゃない」 「ムリムリムリ!! だって、七年もずっと追っかけてきて何百万もつぎ込んじゃったんだもん!!!!」  花子はちょっと引いていた。自分でも分かってるよ、自分の異常さなんて。でも、ウララくんがアイドルをやめたせいでできた心の穴は、もうふさがりそうにない。 「はぁああ~~~。もうこれからどうやって生きていけばいいか分からないよ……」 「え? そんなに……!?」 「そうだよ。ウララくんは推し超えて私の人生そのものだったんだから……」  ここで花子はドン引きした。 「あーあ。彼以上の運命の人に出会うことってもうないんだろうな……」 「運命の人って……ふつう彼氏とかに使うんじゃないの? アンタ、婚活とかやってみたら?」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加