1人が本棚に入れています
本棚に追加
月日は流れ、山田は仕事を退職しダンスの道を再び歩み始めた。柿沼と谷口の他に年上のメンバーが2人。その2人も山田のことを快く受け入れて、5人でダンスチームとして日々を精一杯過ごした。
そして今日は、諦めないで登り続けた山の頂に立つ。
「お客さんの反応どうかな?」
「山は心配性だな。バッチリいいにきまってんじゃん!」
「俺の得意なムーブで沸かしてやるよ」
「谷ちゃん自信満々だねー。じゃあここはリーダーから一言」
「おう。おまえら、今日までよく一緒についてきてくれた。今から、最高の景色見に行くぞ!」
緊張から不安そうにする山田に柿沼が明るく返し、谷口の言葉に年上のメンバーがニコニコと拍手を送る。そこを締めるリーダー。5人は今、互いを信じて全力で楽しもうとしていた。
山田は思う。ああ、本当にあの時踏み出したのは正しかったと。山を登ることを選んでよかったと。
山田は感傷に浸り出遅れそうになると声をかけられる。ハッとして小走りに駆け出した。そんな山田が4人の元へ向かうと、みんなでステージの上へ。観客は5人を見て歓声をあげる。
「今日は俺たちのために集まってくれてありがとなー!楽しんでってくれよ!」
柿沼がそう言うと会場は更に盛り上がる。そして曲が流れ始めると5人は踊り出した。それは高校の時の3人で踊ったあの日よりも洗練されていて、でもあの時のような楽しさがあって……。
5人のダンスに観客が夢中になる。そんな笑顔を見て、山田はまた泣きたくなる。
夢は終わらない。いつまでも続く。
そして、それはきっとーー皆の中にあるのだから。
「山ーー!」
観客の声援に山田がファンサをして、その喜ぶ姿に山田は笑顔が溢れる。
人生山あり谷あり、底なし沼。でもそこからでしか見えない景色もある。
これからも、山田は登り続ける。
山の頂からの景色を、その目で見続けるために。
Fin
最初のコメントを投稿しよう!