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話題を振られて山田は少し考える。進路もそれぞれ確定しており、ダンスに打ち込んでも支障はない。なにしろ、文化祭でのあの高揚感が忘れられない山田は、つい先日も家で一人ダンスをしては「3人で踊りたい」と感じてしまっていた。
「うん、僕も出たい」
そう告げる山田に2人は満足そうに笑う。
それからは忙しくなった。すぐに募集要項を調べて応募し、練習場所を確保して毎日練習漬けになる。時には喧嘩をして挫折しそうな時もあったけど……それでも3人はめげずに最後までやり遂げた。
そんな日々を乗り越えた先に待っていたコンテスト当日。3人の顔は緊張もあるが期待に満ち溢れていた。
早く踊りたい。楽しみたい。そんな思いが胸の中で渦巻く。
そして、ついに出番が回ってきた。山田は2人に目で合図を送るとステージに飛び出す。
「さぁ!次はエントリーナンバー3番!柿沼くん、谷口くん、山田くんのチームです!」
3人のダンスが始まると会場から歓声が上がる。
「おおー!これはすごいぞ!」
2人のキレのある動きと山田のクールな動きのコントラストが観客を魅了していく。
やがて曲が終わり3人はポーズをとるとあの文化祭の時と同じように拍手が送られた。手応えを感じて3人は裏に入ると顔を見合わせてニヤついた。きっと自分たちが1番。そう、信じて……。
しかし、現実はあまりに残酷だった。他のグループのダンスを目にして山田は目を丸くする。
全然自分たちとは違う。動きのキレも、滑らかさも。なにもかもが、及ばない。そう感じたのは谷口と柿沼の2人も同じ。いつも明るい柿沼の顔が暗く、強気な谷口が苦い顔をしていた。
結果は言わずもがな。惨敗。理由などあげたらキリがないだろう。
やれると思った。だから、チャレンジした。わざわざ、挑戦という名の山に登った。3人でなら登り切れると思ったから。
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