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山田も帰ろうとしたが、目に入ってきた者に驚いてその場から動けなかった。
「なん、で……」
山田の視界に入った者、そこにいたのはかつての友人。
柿沼と谷口だった。
たった今踊っていた4人のうちの2人が知り合いだとわかると山田は酷く動揺した。あの二人はずっと続けて、自分だけは残された。その感覚に山田は胸が苦しくなる。
二人は山に登ったのだ。
わざわざ苦労する道を選んで。
自分は麓で見上げている脇役。ギャラリー。輝く二人を彩る風景の一部。
そんな劣等感を山田は抱いてしまった。
「ーーん?あれ?おまえ……もしかして山?」
片付けを終えた柿沼が振り返り山田を見つけてしまった。名を呼ばれてドキリとした山田は思わず、その場から逃げ出した。
「え、ちょ……山!待てよ!」
後ろから柿沼の声が聞こえるが山田は止まらない。
「っ……なんで、なんでだよっ……」
ーー僕はもう……。
山田は声が聞こえなくなるまで走り続けた。そして家に帰りつくと、そのままベッドに倒れ込み枕に顔を埋めて声を押し殺して泣き続けたのだった……。
それから数日後、山田が仕事終わりに駅前を通りかかった時だ。また人だかりができていて、気になって覗いてみた。そこにはあの4人の姿があった。どうやら今度もまたダンスをしているらしい。前回とは違う曲。パフォーマンスも段違いに上がっていた。
山田は頭を横に振って早く立ち去ろうとしたが、心が彼らに惹かれて動けない。やはり目が釘付けになる。
ーーああ、こんなにも心が揺さぶられる。
山田は何故か泣きたくなった。羨望が葛藤が心の中で渦巻く。どうしようもないくらい、それを求めていたのはわかってた。でも、それでも……。
ーーあの時、踏み出せなかった。己の弱さに、反吐が出る。
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