山に登る

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「みんなが俺のこと口だけとか、夢見すぎとか言うけど、それでも俺は本気でやりたかったんだ。だから、俺がダンスやるって言った時、山がすごいって言ってくれて嬉しかった」  山田は思い出す。確かにあの時は何も思わず肯定した。柿沼だけではなく、谷口も含めて2人の夢を笑うなど考えもしなかったから……。  でも、それは過去の話だった。もう自分にその資格はないと頑なに思っていたし、だからこそ高校以降は連絡も絶っていたのだ。  自分は諦めた側だから。心の中で自分を蔑みながら、柿沼たちのことも無理なのになんで頑張るんだろうと嘲笑っていたから。 「なぁ、山。俺さ、おまえとこの前も今日も会えたのさ、偶然じゃなくて運命だと思うんだ。だからさ、また一緒に……」 「そうだぜ!俺たち3人でまたダンスやろーぜ?」  谷口にも言われるが山田は首を横に振る。 「なんでだよ!」 「……っ……僕には、無理だよ」 「そんなことないだろ?だってさ……」  柿沼の言葉を遮って山田が口を開いた。その声は震え掠れて……。 「……僕はもう、2人と肩を並べられないんだ……足手まといにしかなれないんだよ……」  2人の顔が見れずに俯く山田。そんな山田を2人はじっと見つめる。2人が気にかけてくれることが嬉しくもあり、申し訳なくなる。もう、こんな自分に構わないで欲しい。早く断ち切りたい。  だから、あえてーー傷つける言葉を並べる。  2人を、そして……自分を。 「人生山あり谷ありっていうけど、危険が見えているなら避ければいい。わざわざ人生苦労したくない。僕は、2人みたいに無謀な挑戦はしたくないんだ」 「無謀って、おまえ……」 「そうだよ。谷ちゃん……それに柿沼くんも。僕はダンスより他に夢中になるものができたんだよ。だからもう……」
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