不規則なSOS

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 後日、警察から連絡があり、やはり彼の周囲から無線機は見つからなかったという報告を受けた。それに伴い第一発見者の僕は事情聴取を受けることになったが、彼は二日前にはすでに亡くなっており僕はその時会社にいたのでアリバイがあった。 「不思議な話ですよ。二日も前にあんな場所で亡くなっていたら、普通誰かが気づくもんです。二日も発見されずに野ざらしにされていたなんて考えられない。それに無線機が見つからないのも不自然だ。ねえ、おたく本当にSOSの連絡を受けてあの場所に辿り着いたんでしょうね?」  刑事のそんな問いに対し、僕は頷くことしかできない。僕は間違いなく、SOSの無線連絡を受けてあの場所に来たのだ。それが二日前に死んだはずの遺体からだったとしても。  それ以来、僕は登山には行っていない。プールにも行かなくなってしまった。そして天気の悪い昼下がりの休日にはいつもあの時の不規則なSOSが聞こえるような気がした。
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